【不動産】京町家に住んでみよう

不動産

京都人は排他的でなじむのが難しい、とイメージされている人も多いでしょう。しかし「いけず」に代表されるこの言葉には、一見すると冷たい印象があるかもしれませんが、これは京都の人が持っている独特なコミュニケーションや、近所との距離感を保つための知恵とも言えます。心配されるお気持ちはよく分かりますが、むしろその「いけず」と表裏一体の、温かい人とのつながりこそが京町家の大きな魅力です。

マンション住まいだとこの感覚は理解できないかもしれませんが、町家という直に京都の人と触れ合う機会の多い場所で住むことで得られる具体的な魅力をいくつかご紹介します。

地域との自然なつながり

町家が並ぶ路地や通りでは、近所の人と顔を合わせる機会が非常に多く、自然と挨拶を交わすようになります。最初はよそよそしく感じるかもしれませんが、季節の挨拶やちょっとした立ち話から、徐々に信頼関係が生まれていきます。

  • 子どもたちの安全な遊び場: 特に奥まった路地にある町家では、車が通らないため、子どもたちが安心して遊べます。同じ路地の子ども同士で友だちになったり、近所のお年寄りが温かく見守ってくれたりする、昔ながらのコミュニティが今も息づいています。
  • 助け合いの文化: 困ったときには自然と助け合える関係が築かれます。例えば、荷物を運ぶのを手伝ったり、留守の間にお互いの様子を確認し合ったりと、都会では失われがちな世代を超えた助け合いが日常的にあります。

地域の伝統行事への参加

京都の地域コミュニティには、昔から続く行事が数多くあります。これらに参加することで、地域の一員として深く根ざしていくことができます。

  • 地蔵盆(じぞうぼん): 夏に行われる子どもたちのためのお祭りで、地域全体で子どもたちの健やかな成長を願う行事です。
  • お祭りや運動会: 地域の秋祭りや区民運動会など、普段顔を合わせるだけの人とも親しくなれる貴重な機会です。

美意識と文化を日常で感じる暮らし

町家に住むことは、単に家に住むだけでなく、京都の歴史や文化を肌で感じながら暮らすことです。

  • 伝統建築の美: 坪庭や通り庭、格子戸といった町家ならではの意匠は、光や風をうまく取り入れ、四季の移ろいを感じさせてくれます。
  • 歴史を継ぐ誇り: 築100年を超える建物に住むことは、京都の歴史を日常の一部として受け継いでいくことでもあります。

「いけず」に象徴されるような、京都ならではの繊細な人との関わり方も、深く知れば知るほど、その根底にある思いやりや温かさに気づくはずです。まずは、セカンドハウスとして借りたり、マンスリー賃貸で数週間暮らしてみたりと、実際に体験してみることをお勧めします。

京町家の購入と活用

  • 再建築不可物件でも住宅ローンが可能に: 以前は再建築不可の物件にはローンがつきませんでしたが、現在では「京町家カルテ」や「京町家プロフィール」を取得できる物件であれば、住宅ローンが利用できるようになりました。
  • セカンドハウスとしての活用: 使わない期間は「マンスリー賃貸」として貸し出すことができ、維持費をカバーする収益を得ることが可能です。これにより、セカンドハウスのメンテナンスの手間を省くこともできます。
  • 「京町家マンスリー」としての体験: 購入を検討している人は、まずマンスリーで京町家を借りて生活を体験してみることを推奨しています。これにより購入後のミスマッチを防ぐことができます。

「町家の日」について

  • 3月8日は「町家の日」: 町家を盛り上げるために、毎年3月8日が「町家の日」と定められました。この日を中心に約10日間、「町家ウィーク」として様々なイベントが開催されます。
  • 全国的な取り組み: この取り組みは京都だけでなく、滋賀県大津市、兵庫県姫路市、金沢、新潟でも行われており、古い建物を残すための全国的な運動となっています。

京町家の購入について

  • 中心部の京町家は高価な場合もありますが、上京区の西陣地区などでは比較的安価な物件も存在します。
  • 建物の評価はあまり高くないことが多いですが、土地の広さや道路の広さが価格に影響します。
  • 路地にある物件は再建築ができないなどのデメリットはありますが、通りに面した物件よりも静かで住宅としてはメリットもあります。
  • 購入価格は3000万円以上から物件が見つかる可能性がありますが、建物のフルリノベーション費用として2000万円程度を別途見積もる必要があります。
  • この費用を合わせるとマンションと同じくらいの価格になるため、「安さ」を求めて購入するものではないですね。

京町家の希少性について

京都市が実施した実態調査によると、京町家は急速なペースで減少しています。

  • 年間約800軒のペースで減少: 2008年から2016年の7年間で、約5,600軒の京町家が失われたことが明らかになっています。これは、1日あたり約2軒の京町家が取り壊されている計算になります。
  • 空き家率の上昇: 同調査では、残存する京町家の中でも空き家が増加傾向にあり、建物の老朽化や維持管理の困難さが、減少の大きな要因となっていることが指摘されています。

このように京町家が失われている主な理由は、以下の通りです。

  1. 維持・管理の難しさ: 古い木造建築である京町家は、定期的なメンテナンスや修繕に費用がかかります。所有者の高齢化や相続の問題も維持を困難にしている一因です。
  2. 再建築の問題: 多くの京町家は路地奥にあることや間口が狭いことなどから、現在の建築基準法では建て替えができない「再建築不可」の物件が多く、資産として扱いが難しいという側面があります。
  3. 土地の有効活用: 京都市の中心部は土地の需要が高く、マンションやオフィス、ホテルなどを建設するために、まとまった敷地を持つ京町家が取り壊されるケースが増えています。

こうした状況から、京町家は日々その数を減らしており、その結果として希少価値が高まっています。京都市は「京町家の保全及び継承に関する条例」を制定するなど、その保存に力を入れていますが、依然として減少に歯止めがかかっていないのが現状ですが、その希少性ゆえに資産価値が落ちにくいという特性があります。

京町家に興味がある人はこういった事柄を考慮した上で購入、または賃貸として居住することを検討されてはいかがでしょうか?


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