はじめに
2025年3月に実施された「野村個人投資家サーベイ」では、個人投資家1,000人を対象に、市場に対する見方や投資意欲、注目銘柄、為替動向、インフレ期待、ESGへの関心など多角的な視点からの調査が行われました。本記事では各トピックのポイントを詳しく解説していきます。
【概要】野村証券が2025年3月3日に実施した「野村個人投資家調査」は、個人投資家の平均的なマーケット感覚や関心項目を指し示す金融調査データとして有用な内容です。本調査は1,000名の個人投資家を対象として実施されました。
平均的な市場観
個人投資家の三ヶ月後の株価見通しをもとに評価する「Nomura I-View Index」は36.8で前回調査から6.6ポイント上昇しました。
日経平均の予測分布
- 「1,000円上昇」: 29.8%
- 「2,000円上昇」: 21.3%
- 「2,000円以上の上昇」: 17.3%
- 「1,000円下落」: 18.9%
- 「2,000円下落」: 5.5%
- 「2,000円以上の下落」: 7.2%
市場への影響要因
今後3ヶ月の市場に影響を与える要因として「国際情勢」を上げた回答者は65.0%と、前回調査から14.6ポイント増加しました。
- 国際情勢: 65.0%
- 為替動向: 12.1%
有望なセクターと個別業種
DI(分散指数) が上昇した業種
自動車: -27.6(最低レベル)
金融: +23.4
材料: +7.4
診療薬品: -0.7(前回 -3.5 から回復)
運輸・ユーティリティー: -1.3(前回 -6.9)
株価の見通し
野村I-View指数は36.8ポイントと、前回より6.6ポイント上昇。これは株価が上昇すると予想する投資家が増えていることを示します。
- **日経平均株価(3月3日時点)**は37,785.47円と、前回より725.55円下落。
- 上昇を予想する投資家は全体の68.4%(前回比+3.3ポイント)。
- 「約1,000円の上昇」:29.8%
- 「約2,000円の上昇」:21.3%
- 「2,000円以上の上昇」:17.3%
- 下落を予想する層は減少傾向。
市場に影響を与える要因
「国際情勢」を最も影響があると答えた投資家が65.0%で、前回から14.6ポイント増。為替動向を挙げる割合は減少し、国際的な地政学リスクや経済不安が重視されていることが分かります。
魅力的な業種・銘柄
DI(拡散指数)により業種ごとの投資魅力度が計測されました。
- 上昇したセクター:
- 輸送・公益:-1.3(+5.6ポイント)
- 医薬品:-0.7(+2.8ポイント)
- 素材:7.4(+2.5ポイント)
- 低下したセクター:
- 自動車:-27.6(-7.4ポイント)
最も人気の個別銘柄(上位抜粋):
- トヨタ(7203):82票
- 三菱UFJ(8306):66票
- NTT(9432):33票
- 三菱商事(8058):32票
- ソニー(6758)、任天堂(7974)、JT(2914)なども人気上位にランクイン。
為替見通し(USD/JPY)
- 円高を予想する投資家は全体の66.8%、前回より7.2ポイント増加。
- 「5円程度円高」:47.3%
- 「10円以上円高」:4.9%
- 円安を予想する投資家の割合は全体的に減少。
投資魅力度(通貨別DI)
- 米ドル:42.4(-9.3ポイント)
- 日本円:9.5(+2.1ポイント)
- 豪ドル:6.4
- 人民元:-46.2(+9.5ポイントで改善)
保有予定の金融商品
DIで増加・減少意向を調査:
- 日本株:46.9(+3.6ポイント)
- 現金・預金:26.2
- 日本投信:25.9
- 外国株式:17.2
- 外国投信・債券・金なども一定の関心
物価の見通し(1年後)
- 「5%以上上昇」を予想する人:17.4%(前回より+4.7ポイント)
- 「変わらない」:8.5%
- 「下落」:17.4%
インフレへの警戒感は継続しています。
ESG投資と株主優待に対する関心
- ESGへの関心:
- 「やや関心がある」:39.4%
- 「あまり関心がない」:32.8%
- 米国でのESG批判を受けた関心の変化:
- 「変わらない」:59.3%
- 「関心が高まった」:9.0%
ESG関連で関心のある金融商品:
- 環境企業に投資する投信(59.4%)
- ガバナンスに優れる企業の投信(41.2%)
- グリーンボンドやSDGs関連商品にも関心あり
【ESGとは】 ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字を取ったもので、企業が長期的な成長と持続可能性を重視する上での評価基準です。
株主優待の重視度:
- 「企業の成長性や割安性とあわせて重視」:49.8%
- 「最も重視する」:12.7%
回答者の属性(サマリー)
- 男女比:男性 87.3%、女性 12.7%
- 年齢層:60歳以上が57.5%、50代が23.4%
- 職業:会社員・公務員が39.2%、無職・年金受給者が31.1%
- 金融資産額:1,000万円以上が過半数
- 投資目的:長期保有 55.7%、高配当狙い 22.6%
株式市場:日経平均株価の推移
- 3月時点の投資家の見通し:
- 68.4%の投資家が「今後3か月以内に日経平均株価が上昇する」と回答。
- 特に「1,000円程度の上昇」を予想した層が29.8%、 「2,000円超の上昇」を予想した層も17.3%にのぼりました。
- 9月現在の状況:
- 日経平均は44,000円台を突破。
- 2025年3月の水準(約37,785円)から6,000円以上の上昇を記録。
- これは予想を大きく上回る上昇率であり、 投資家の楽観的な見通しが現実のものとなったと言えます。
- 参考データ:
- 2025年9月9日:日経平均 44,185円(過去最高値更新)
為替市場:USD/JPY(ドル円)の動き
- 3月時点の見通し:
- 66.8%の投資家が「円高(ドル安)になる」と予測。
- 特に「5円程度円高になる」と予測したのが47.3%。
- 9月現在の実勢:
- ドル円相場は147円前後で安定推移。
- 3月時点の為替水準(150.42円)と比べると、やや円高ではあるが、 投資家が期待していたような急激な円高にはなっていません。
- 結果として、為替予測はやや外れた形になりました。
まとめ:投資家の予測は的中したのか?
指標 | 3月の予測 | 9月の実績 | 評価 |
---|---|---|---|
日経平均 | 上昇を期待(+1,000~2,000円) | +6,000円以上の上昇 | 予想以上の上昇 |
ドル円為替 | 円高(145円未満)を予想 | 147円前後で横ばい〜やや円高 | 想定より弱い円高 |
投資家の株価に対する期待は的中し、それ以上の成果が出ました。一方、為替についてはやや見通しが外れました。これはインフレや米国金利政策など、外部要因の変動が大きく影響していると考えられます。
今後の投資戦略に向けて
この比較から分かるのは、個人投資家の見通しはあまり当てにならず株価は予想以上に上昇。為替は予想ほど円高に振れなかったということです。私たちは国内外の政策動向や経済指標も注視しながら、冷静な投資判断を下すことが求められます。
おわりに
2025年3月の野村個人投資家サーベイでは、円高や物価上昇への期待、ESGや株主優待への一定の関心が浮き彫りになりました。一方で、自動車セクターへの投資意欲が低下し、素材・公益といった堅実な分野への注目が高まっている点が印象的です。
今後の市場動向を見極める上でも、本調査は投資家の心理や行動を知る有益な資料といえるでしょう。
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